もうちょっといい話

弁護士さんに依頼したらお金の回収は確実なの?


 弁護士にお金を回収を依頼したら確実に回収してもらえるのでしょうか?

 答えは、残念ながら確実ではありません。

 日頃仕事をしていて、感じるのは、お金を回収することの難しさです。  それと同時にお金の支払がスムーズに受けられるよう制度の整備が必要ではないかということです。

 お金の回収の実益をあげるためには、

①お金を支払うべき人の財産の調査権を認めること

あるいは、

②強制執行の段階でできる限り広い範囲の差押えを認め、執行による回収の実現を認めることという2つの方法が考えられます。

? ②の方法の具体例としては、支店名を特定せず、支店番号順に差し押さえるという預金債権差押の方法があります。

 しかし、残念ながら、つい最近、最高裁判所は、支店名を特定せず、支店番号順に差し押さえるという債権差押の申立について、不適法であり認められないと判断しました(平成23年9月20日付け判決、最高裁判所ホームページhttp://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81634&hanreiKbn=02参照)。

 このような支店名を特定しない差押えが申し立てられたのは、①の財産調査権が実効性のないものであり、お金の回収するために工夫を重ねて申し立てたという経緯があります。

? では①の方法はどのようなものがあるのでしょうか?

 ①の方法の具体例としては、財産開示制度や弁護士会照会というものがあります。

?

 お金を支払うべき人に対する判決が確定した場合、債権者は、お金を支払うべき人に対して財産の開示を求める申立をすることができます。この制度を財産開示制度と言います。

 しかし、日本の財産開示制度では、お金を支払うべき人が出頭しなかったり、嘘をついたりしたときでも、諸外国では懲役刑を設定しているところもありますが、日本では過料の制裁があるだけです。

 また、諸外国では、裁判所の判断で第三者(銀行、証券会社、法務局等)への調査権を認めているところもありますが、日本では、お金を支払うべき人に開示をさせるにとどまっています。

 このように、日本の財産開示制度は、不十分なものと言わざるを得ません。

? 一方、弁護士は、弁護士会照会という調査制度を利用して、お金を支払うべき人の財産を調査する権限があります。しかし、実情で言うと、金融機関等は、お金を支払うべき人の財産調査に対し、個人情報保護や守秘義務を理由に消極的であり、弁護士会照会による調査も不十分な状況にあります。金融機関の拒否回答に対しては、弁護士会として権利の実現のために必要不可欠であるとして再度の回答を求めていますが、残念ながら回答されないことが多いのが実情です。 私は、愛知県弁護士会において、弁護士会照会を取り扱う調査室に所属しています。

  しかし、せっかく判決まで得たのに、支払を確保できないなんて、おかしいのではないかと思います。お金の支払を確保できるのは事前に担保をとったりして策を講じている人だけだという実情はおかしいと思います。

 お金と時間をかけて、判決までたどりついたのに、その判決書は紙キレだったなんて悪い冗談としか言いようがありません。

? 弁護士法1条は、弁護士の使命について、「社会正義の実現」にあるとしており、判決を得たのにその権利の実現ができないなんて、弁護士の使命を全うできていないと思うのです。

 日々の仕事をする中で、正当な権利が、正当に実現されるよう努力していきたいと思っています。

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