ちょっといい話

第8回

オウム真理教事件を考える


??? 今年の11月21日、最後に残った遠藤誠一被告に対する死刑判決が最高裁で確定し、約16年半に及んだ一連のオウム真理教の裁判が終わりました。坂本弁護士一家殺害事件、松本サリン・地下鉄サリン事件など、数多くの凶悪な事件を起こしたオウム真理教ですが、なぜ多くの優秀な若者が魔王のような麻原彰晃に惹かれていったのでしょうか。遠藤被告も、帯広畜産大学を出た後、京都大学大学院でウィルスを研究していた学者の卵でした。

?? ? 私も、随分前ですが、オウム真理教脱会者の国選弁護人をしたことがあります。このときは、「裏切り者」への教団からの襲撃を危惧して、弁護士会が弁護人の私に生命保険を掛けてくれましたが、私が担当した被告もまじめな青年でした。

?? マインドコントロールという言葉が一躍流行語になりましたが、謎は残ったままです。

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??? 中日新聞に、松本サリン事件の被害者河野義行さんのインタビュー記事が載っていました。河野さんは、死刑囚を含む教団元幹部らと面会する中で、「ごく普通の人。むしろ他の人よりも真面目」という印象を持ったそうです。裁判が終わったことで、口を開く関係者が出てくるかも知れない、再発を防ぐためにも、テーマを持ったジャーナリストに真相究明を期待したい、とも語っています。

??? また、河野さんは、服役を終えて謝罪に来た元信者と友人となり、交流を続けているそうです。死刑についても、個人的には廃止すべきだと考えていると語っています。

??? 河野さんとは、弁護士会で講演をお願いしたとき、シンポジウムの司会役を担当し、打ち上げの懇親会でも親しくお話をしたことがありますが、この新聞記事を読んで、改めて本当に立派な方だと感じました。

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??? オウム真理教事件では、裁判のあり方も議論されました。「社会の敵」になぜそんなに手間を掛けて裁判をするのかという意見もあったようです。そこで、こんな昔話を思い出しました。

??? アメリカ独立戦争直前の1770年、ボストンでイギリス軍が市民に発砲し、多数の死傷者が出ました。イギリス軍の将兵9人が起訴されましたが、市民にとっては憎んでも余りある弾圧者であり、市民が被告達をリンチにかけるという噂も飛んだようです。被告達を弁護する弁護人がいない中で、ジョン・アダムス弁護士(後の第2代大統領)が弁護を引き受けました。アダムス弁護士は、「みんなの敵であるような人でも、等しく弁護を受ける必要がある。弁護を引き受ける人が1人もいないとなると、これから独立するアメリカには人権意識がないことになる。そういう社会であってはならない」と考え、裁判でも「仮に真犯人が罪を免れることがあっても、無実の人を誤って罰しないことが裁判の使命である。その方が社会にとって有益である」と説いたとのことです。被告達に対する憎悪で満ちていた法廷は、次第にアダムスの言葉に耳を傾けるようになり、陪審員は9人のうち2人を除いて無罪の評決を下しました。

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??? オウム真理教の事件は、様々な面で、我々の社会のあり方を考えさせるものでした。

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